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「ノア 約束の舟」が全国で公開されている

「ノア 約束の舟」が全国で公開されている

防水の歴史研究会JWHA事務局長が見たノアの方舟「約束の船」

ノアロードーショー

旧約聖書の「ノアの方舟」は防水の歴史について話す時、欠かせないテーマです。ルーフネットのサイト内検索で「聖書、防水」で検索していただくと「聖書と防水3部作」という記事があるので詳細に興味がある方はごらん下さい。一般の検索サイトでもかなり上位に出てきます。

今月に入って街のあちこちで、ラッセル・クロウ主演のノアの映画のポスターをよく見かけました。ポスターにはちゃんと黒い方舟も描かれています。
愛読している「ビッグイシュー」でも巻頭インタビューでラッセル・クロウとダーレン・アロノフスキー監督の「ノア」の解釈について紹介していました。

ビッグイシューと映画のパンフ
ビッグイシュー239号350円。右は映画のパンプレット800円。

「ノア 約束の舟」は、人類最古の物語に大胆な新解釈を加え、世界中で大ヒットを飛ばしている」(ビッグイシューインタビュー前書きより)
防水関係者としては「ノアがどんな約束」をしていたか、ということより、方舟に防水を施すシーンがあるか?あったとすればどんな風に施工するのだろう?に興味が集中します。

その前にまず、ノアの方舟と防水の話を、少しだけおさらいしておきましょう。

神はノアに瀝青で防水することを命じた

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神はノアに言われた。
あなたはゴフェルの木の方舟を作りなさい。箱舟には小部屋をいくつも造り、内側にも外側にも瀝青(アスファルト)を塗りなさい。次のようにして、それを造りなさい。方舟の長さを300アンマ、高さを50アンマ、幅を50アンマにし、方舟に明り取りを造り、上から1アンマにしてそれを仕上げなさい。方舟の側面には戸口を造りなさい。また1階と2階と3階を造りなさい。
創世記6章 14-16節

方舟の大きさは、換算すると「長さ133.5m、幅22.2m、高さ13.3m」となり、平凡社世界大百科事典によると、約15,000トンクラスの舟にあたります。ノアの洪水は、紀元前3000年ころ起こったとされています。 方舟の目的は40日の洪水の後、150日間水が引くまで、のちの世界の「種」となる生き物たちを生存させる大空間を提供することです。舟とはいっても、水上航行ではなく水面浮揚が主目的です。だから「浮かぶ家」なのです。

ノアの方舟は浮かぶ家。その屋根・外壁防水はアスファルト!

さらに形状について、多くのカップルの生活空間を確保するため、舟は直方体に近い形状であったと推測されています。ウィキペディアの試算では総容積は、40,000立方メートル近くにも達し、ほぼタイタニック号にも匹敵する排水量になるようです。

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建造中のノアの方舟(15世紀フランス。)

こうなると、完全に建築です。 創世記には、「方舟の内側と外側に、瀝青を塗りなさい」とあります。 外側とは喫水、船体だけでなく、当然 壁、屋根が含まれます。何しろ神は40日40夜雨を降らせて洪水を起こしたのです。神の命令で3階建ての大きな建物をつくり、内外側に塗るよう命令されているのだから、屋根に塗らないほうが不思議です。

すると、防水材としてのアスファルトは「ノアの方舟の船体に利用された」ではなく、「ノアの方舟(浮かぶ家)の屋根・外壁防水に利用された」と言ってよいことになります。すなわち建築防水の起源はBC3000年のノアの方舟。

またこんなことも言えるかもしれません。

ノアの方舟とは「浮かぶ家」。その内外側に瀝青が塗られた。ということは…
神の定めたやり方で屋根に瀝青を塗った。世界初のアスファルト防水仕様という訳です。

「洪水の中で舟から鳩を放つノア」
「洪水の中で舟から鳩を放つノア」13世紀中ごろ。ヴェネチア・サンマルコ大聖堂。

※ ※ ※

ノアポスター

さて、映画は見たいのですが、なかなか時間は取れない、延ばし延ばしにしているうちに、チャンスが来ました。(これをチャンスといってよいのか)6月19日夕刻に起きた小田急線相模大野駅での脱線事故です。日本防水の歴史研究会JWHA事務局長はその日の作業を終えて新宿駅に着き、町田方面に向かうところでした。改札口で小田急は新百合ヶ丘までしか運転していない、回復は23時ころになるであろうという掲示を見ます。珍しく素早く反応しました。「新宿でビールを飲むのをやめて、とりあえず新百合丘まで行き、ノアの映画をみて、見終わった頃、復旧しているであろう小田急線に乗って帰る」という作戦でした。たまたま持っていたPCで調べると、丁度映画の最終上演が21時から23時30分。ぴったりです! 

開演時間には10分ほど遅れてしまったのですが、ストーリーは、方舟の製作にはまだまだの段階で間に合いました。

映画の関係部分のみ紹介しましょう。
ノアが神のお告げで、家族を連れて家を出ます。途中で盗賊や石の巨人に襲われます。逃げ込んだ砂漠の谷間は、一晩のうちに、ゴフェル(糸杉)の森で覆われます。木はあまり太くはありません。製材して板として使うより、面取りして角材として使い易そうな太さで、現実的な気がしました。タンカーなみの船を造るのにノアと3人の息子だけでは手が足りません。しかし前日襲ってきた岩の巨人たちが造船工事のほとんどの実作業を行い、かつ方舟を乗っ取ろうと襲ってくる人間たちを追い払います。この巨人は、まるで土瀝青の塊。巨人たちは実はもともと「光」だったのです。昔アダムを助けたことで神の怒りをかい、泥に閉じ込められ、大きな岩となってうごめくようになったという想定です。

秋田で採取した土瀝青(赤ん坊の頭大)

秋田で採取した土瀝青。これは、赤ん坊の頭程度の大きさ。成分の分析データもある。

もと光の岩の巨人たちは、2年前秋田で採集した「土瀝青」とそっくりなのです。聖書の中にはノアの方舟やバベルの塔にアスファルトが登場しますが、これらの中東地域と秋田や新潟は地質学的に似ており、いずれも土瀝青(天然アスファルト)や石油が自然に地表に出てくるところだそうです。

アロノフスキ監督がそこまで考えて、土瀝青の塊のような巨人を作ったかどうかはわかりませんが、防水関係者としては、方舟に塗られた黒い防水材を見ると、これは「巨人たちが自分の体を溶かして、防水したのではないか」と想像を膨らませてしまいます。営業妨害になるので映画の内容はここまでにしましょう。

※ ※ ※

23時30分映画館の外に出ると、嫌な予感。
電車も復旧して、街はひっそりしているはずが、大変な賑わいで道路は大渋滞。結局今晩中の復旧は不可能になっていました。バス乗り場、タクシー乗り場に人があふれています。思わず今見てきた、方舟に群がる動物と人間たちを連想ししまいました

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でも乗り場周辺ではさすが日本人。割り込みもなく3時間待ちというタクシー待ちの列に並んでいました。この写真はバス待ちの列。1時間待ったという人も。

ノアの洪水伝説に似た話は、古代中近東には多いそうです。中でも有名なのは古代アッシリアの遺跡から発見された「ギルガメッシュ叙事詩」。この中で、神・ウトナピシュテムは1万リットルの瀝青を溶かして舟を防水するよう命じています。でもこの話はまた「ギルガメッシュの映画」を見ることができたら、にしましょう。

2014/06/27(金) 11:44:24|「聖書と防水」3部作|

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