日本最古のRC造高層集合住宅の屋上をドローンで見ると
日本最古のRC造高層集合住宅の屋上をドローンで見ると
軍艦島の建物をドローンで見る
写真2:30号棟全景(写真・宮内博之氏)
写真1:30号棟(写真・宮内博之氏)
建築分野のドローンの利活用と端島(軍艦島)RC造建築物の調査事例の紹介
国立研究開発法人 建築研究所 宮内博之
ドローンを操作する筆者
写真3:65号棟(写真・宮内博之氏)
ドローンは空の産業革命として様々な分野で活用され、建築分野でも建物の維持保全や、災害時での利用が考えられています。
このようなドローンの可能性を具現化するために、私は建築研究所にて、ドローンの技術情報収集と建築分野への利活用に関する研究を実施しており、日本建築学会では2016年4月に耐久保全運営委員会の傘下に「UAVを活用した建築保全技術開発WG」(主査:宮内、幹事:兼松学・東京理科大学教授)を設置しました。
また、ドローンを使用して建物の劣化状況の観察や計測等も行っています。例えば、2016年12月に長崎県端島(軍艦島)のRC造建築物を対象として、ドローンによる撮影を行いました。(なお、本撮影においては、私が公益社団法人日本コンクリート工学会「供用不可まで劣化破損が進行したコンクリート構造物の補修・補強工法に関する研究委員会」の委員として、屋根防水担当として端島に上陸した際の研究活動の一環として得られた成果です。)
1916年に建設された日本初のRC造高層アパートである30号棟について、ドローンを使用して撮影しました(写真1)。30号棟は大破状態であり、外壁だけでなく、床も抜け落ちており、階段から屋根面に上がることも危険な状態です。このため、歩行不能な箇所においてドローンによる調査は効果的です。
写真2はドローンによる30号棟の全景を撮影した写真で、屋根面において破損した保護コンクリートの下にアスファルト防水材を見ることができます。
写真3はドローンにより65号棟屋根面を上空真上から撮影した写真です。65号棟はコの字型をしており、1945年に完成した端島最大のRC造のアパート(鉱員社宅)です。今回、屋上からの屋根調査も実施しましたが、煙突、滑り台等の遊戯場所、屋根間の仕切り等により屋根の形状が複雑であるため、屋根全体における部位の構成や劣化分布を把握することは困難でした。しかし、ドローンによる上空撮影により、どの個所を補修すれば良いかの全体像も把握することもできました。
写真4:3号棟(写真・宮内博之氏)
写真4は端島で最も高い位置に建設されている3号棟の外壁面の写真です。外壁が崩壊している面は崖となっているため、足場を組むことが難しく、近づくことができません。またパラペットが崩落しているため、外壁破損個所の調査もできません。このため、建物屋上からのドローン対面操縦により外壁面の撮影を行いました。なお、写真4の中央部は私であり、FPVというPCのモニターを見ながらの撮影を行ったものです。
現在、建築分野へのドローンの利活用を推進しており、3/3に建築研究所講演会(場所:有楽町朝日ホール)にて「ドローン技術の動向と建築維持保全への利活用の検討」と題して報告する予定です。また、5/18には日本建築学会主催で「建築×ドローン2017(第1回建築ドローンシンポジウム」を開催することになりました。
防水分野でもぜひ関係者と協働してドローンの利活用を考えてみたいと思います。
2017/02/05(日) 22:25:29|歴史的建物を守る|