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AIJ防水アーカイブズWGの活動状況

AIJ防水アーカイブズWGの活動状況

なぜ防水アーカイブズが必要なのか?①

アーカイブカット3F

現在のメンブレン防水・シーリング材料と技術体系は先人たちが築いてきた、過去の膨大な情報の上に成り立っている。幾多の漏水事故を糧として設計、材料、施工は進歩してきたからである。そして将来の防水は現在の情報の上に作られるだろう。過去を学ぶことは将来を考えることである。」(田中享二氏談)この言葉に異を唱える人はごく稀だが、実行する人はもっと少ない。ことは必ずしも容易なことではない。実行するためには「防水の過去から現在を繋ぐ装置」が必要であり、その一つが防水アーカイブズである。

「防水アーカイブズは世界中のどこにもない。どんなものを作ればよいのか。自分たちで考えてゆかねばならない」。そのための場として、2013年4月、日本建築学会防水工事運営委員会内に「防水アーカイブズあり方検討委員会」が設置された。主査は提唱者の田中享二氏(東京工業大学名誉教授)、幹事は松尾隆士氏(清水建設)

アーカイブズといっても、対象は古いものだけではない、田中氏は、「実は現在のものも危ない。現在のものはまわりにもふんだんにあり、電話でお願いすればすぐに材料も技術資料でも入手できるため、誰も取っておこうとは考えないが、放っておくと(古いものと)同じ運命をたどるからだ」と指摘する。過去から学べるのは人間だけである。それが知恵である。単に消えてゆくものを惜しむノスタルジーではない。

対象範囲に関する問題も重要だ。漢字の幹事の松尾氏は「アーカイブの原則として、現在の価値判断による取捨選択はすべきでない」という。価値基準は時代とともに変化するからである。このことも現実的な資料収取活動をむずかしくする要因の一つだ。

設立から7年、地道な活動を経て、WGの名称は「防水アーカイブズ調査研究検討WG」と変わり、少しづつ成果を上げてきた。大会での発表論文は15本に達し、メンブレン防水・シーリング防水に関する貴重な資料の掘り起こしと、そこから見えてきた研究開発にかかわった技術者や技能者、研究者たちの熱い思いが明らかにされてきた。彼らの熱意は、時々のJIS、JASSその他の規格に反映され、日本の防水のレベルを高めてきた。その工程、過程を資料から読み取ることが*アーキビストの喜びだ。

さらに特筆したいのは、「防水アーカイブズの先進性」という点である。通常、建築アーカイブズといった場合には、ある建築家の資料とかこの建物の資料といったひとつのまとまりを持った資料群を対象とする。ところが今回のWGが対象とするのは“防水"というまとまりであるため、資料の範囲を確定しづらい。特定の技術分野・防水技術という括りでアーカイブズを構築しようとする行為は建築分野において実は先進的な試みなのである。

※アーキビスト:公文書管理の専門職を「アーキビスト」と呼ぶ。広くはArchivistとは、アーカイブズ管理者。アーカイブまたはアーカイブズAarchivesの意味は二つあり、歴史的資料や古文書といった資料をさす場合と、公文書館・記録保管所など資料の所蔵機関をさす場合がある。ここでは防水アーカイブズにかかわる防水アーキビストの意味。

月刊リフォーム2021年1月号では、日本建築学会の防水アーカイブズWGの活動と成果を紹介している。

内容

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防水アーカイブズ・防水遺産の受け皿:田中享二

画像の説明
防水アーカイブズを持続可能な仕組みとするために:松尾隆士
発表論文概要

日本建築学会大会で発表された防水アーカイブズ研究報告一覧

2014年

  • 防水アーカイブズ構想とそのフィジビリティスタディ
    1659日本建築学会大会(近畿)2014年9月
    田中享二、松尾隆士

2016年

  • 防水アーカイブズに関する研究
    その2 霞が関ビルCWシーリング設計関連資料収集状況
    1679 日本建築学会大会(九州)2016年8月
    寺内伸、田中享二、飯島義仁、野口修
  • 防水アーカイブズに関する研究
    その3 霞が関ビルCWシーリング施工関連資料収集状況
    1680 日本建築学会大会(九州)2016年8月
    飯島義仁、田中享二、寺内伸、野口修、松尾隆士

2017年

  • 防水アーカイブズに関する研究
    その4 1933年竣工の大阪ガスビル南館のメンブレン防水について
    1438 日本建築学会大会(中国)2017年8月
    中沢裕二、田中享二、佐野吉彦、上西明、松尾隆士、関原克章

2018年

  • 防水アーカイブズに関する研究
    その5 防水アーカイブズ資料としての「ひと」情報収集の現状
    1624 日本建築学会大会(東北)2018年9月
    桑田恵美、松尾隆士、田中享二
  • 防水アーカイブズに関する研究
    その6 アスファルトルーフィング類における原紙・原反の変遷1原紙
    1625 日本建築学会大会(東北)2018年9月関原克章、田中享二、松尾隆士、中沢裕二
  • 防水アーカイブズに関する研究
    その7 アスファルトルーフィング類における原紙・原反の変遷2合成繊維不織布原反
    1626 日本建築学会大会(東北)2018年9月
    中沢裕二、田中享二、松尾隆士、関原克章
  • 防水アーカイブズに関する研究
    その8 シーリング専門工事業関連資料収集状況-1
    1513 日本建築学会大会(東北)2018年9月
    飯島義仁、田中享二、寺内伸、野口修、松尾隆士
  • 防水アーカイブズに関する研究
    その9 シーリング専門工事業関連資料収集状況-2
    1514 日本建築学会大会(東北)2018年9月
    野口修、田中享二、寺内伸、飯島義仁、松尾隆士

2019年

  • 防水アーカイブズに関する研究
    その10 霞が関ビルのメンブレン防水の概要
    1497 日本建築学会大会(北陸)2019年9月
  • 防水アーカイブズに関する研究
    その11 霞が関ビルの屋上防水層の納まりと施工
    1498 日本建築学会大会学術講演梗概集(北陸)2019年9月
    名取健太郎、内藤龍夫、松尾隆士、田中享二
  • 防水アーカイブズに関する研究
    その12 都市再生機構(旧日本住宅公団)の防水仕様書類の変遷と防水保証について
    1499 日本建築学会大会(北陸)2019年9月
    矢内泰弘、田中享二、松尾隆士、中沢裕二、森田喜晴
  • 防水アーカイブズに関する研究
    その13 防水工事用アスファルトの変遷
    1500 日本建築学会大会(北陸)2019年9月
    関原克章、田中享二、松尾隆士、中沢裕二、
  • 防水アーカイブズに関する研究
    その14 シーリング材練混ぜ機関連資料収集状況その1
    1521 日本建築学会大会(北陸)2019年9月
    飯島義仁、野⼝修、寺内伸、松尾隆⼠、⽥中享⼆
  • 防水アーカイブズに関する研究
    その15 シーリング材練混ぜ機関連資料収集状況その2
    1522 日本建築学会大会(北陸)2019年9月
    野⼝修、飯島義仁、寺内伸、松尾隆⼠、⽥中享⼆

2020年

  • 防水アーカイブズに関する研究
    明治期における防水工事用アスファルト関連の研究報告に関する調査(その1)
    1369 日本建築学会大会(関東)2020年9月
    関原克章、寺内伸、中沢裕二、松尾隆士。森田喜晴、田中享二
  • 防水アーカイブズに関する研究
    明治期における防水工事用アスファルト関連の研究報告に関する調査(その2)
    1370 日本建築学会大会(関東)2020年9月
    寺内伸、関原克章、中沢裕二、松尾隆士、森田喜晴、田中享二
  • 防水アーカイブズに関する研究
    霞が関ビルの人工地盤防水層の納まりと施工(1)
    1371 日本建築学会大会(関東)2020年9月
    内藤龍夫、名取健太郎、松尾隆士、田中享二
  • 防水アーカイブズに関する研究
    霞が関ビルの人工地盤防水層の納まりと施工(2)
    1372 日本建築学会大会(関東)2020年9月
    名取健太郎、内藤龍夫、松尾隆士、田中享二
  • 防水アーカイブズに関する研究
    シーリング材の施工要領書とJASS8防水工事
    1401 日本建築学会大会(関東)2020年9月
    飯島義仁、野口修、寺内伸、松尾隆士、田中享二

2021/04/30(金)01:47:04|ARCHIVES|

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