「今の防水業界がこれでいいのか」「いい仕事をすること、社会的貢献をすることと、防水工事で利益をあげることは両立すべきだ」と考えるあなたに!

もう一度 聞いてほしい この話

もう一度 聞いてほしい この話

聞いてほしいのは 田中享ニ 東工大名誉教授 のこの話です

日本の建築防水材料・技術のレベルは世界のトップレベルにあります。何しろ先進国の中で、これほど降雨条件の厳しいところは少ないし、職人は器用だし、客もうるさいですからね。 

かつて20~30年前まではアメリカや欧州への防水視察旅行が盛んに行われていました。「もう学ぶものは無い」というのが大方のがここ10年来の認識でした。

でもそれは防水を提供する側からだけの見方だったのでは無いでしょうか?世界最高レベルの材料と世界最高の施工技術がわが国に存在することは間違い無いでしょう。でも実際に行われた工事の結果は世界最高でしょうか?

工事作業者は誰の方を向いて仕事をしているのでしょう?工事の工期は、工賃は、材料費は?「納得できる防水工事をしたいと思っている、それだけの技能を持った職人」が「世界のトップレベルの防水工事」を実現できる環境に今の日本はあるのでしょうか?

2008年6月27日に行われたJWMA(日本防水材料協会)の総会後のパーティーで、で日本一の防水研究者である東京工業大学田中享二教授(当時)はこんな話をしました。私のメモによるとこんな内容でした。

tanaka takumi
(写真は2010.11月撮影)

今世界の中で日本の防水材料はどんな水準にあるかと言うと、間違いなくトップレベルにあります。でそのトップレベルの中でも上に行ってるかというと、行ってません。そに理由は今までの皆さんのやり方が、まず設計者がいてゼネコンがいて、そしてメーカがいて、という形だったから、材料開発が常に後追いの形で、行なわれることが多かった。自ら先に行くという習慣が無かったからではないと思います。

国内だけを考えていい時代ならそれで、いいのだが、世界水準に到達した今、やはりもう一歩先へ行く必要があると思う。先般防水の国際会議があった。もう少し先を行ってる世界があったのでその話をさせていただきましょう。

  1. まず環境。LCC-02の問題にしても、日本の防水材の技術は世界のどのレベルに?LOC-02の問題にしてももっと、きちっとやろうと言う動きがある。日本の防水も一時やりかけたが、腰砕けになってしまった。今CASBIEなどによって建物の性能を総合的に評価しようとしてるんですが、防水の部分は何か分かりにくい数字が入っているのが現状。これを何とかきちっとしなくちゃならない.先進国ではこの防水をはじめ、要素技術をちゃんと抑えている。
  2. 環境関係。材料を植物起源の材料で作ろうという研究が一部で進んでいる。今のところ大豆が主流になっている。燃料分野との奪い合いになるかも知れない。
  3. 防水のライフは20年から30年が標準になりつつある。そういう意味で瑕疵担保10年は時代の趨勢に合わないが法律が絡むと責任が重いので、同じ期間にするのはは難しい。
  4. 北米では耐風性能についてしっかりした材料を作っていこうとする動きが強まっている。我々も今皆さんのサポートを得て、宮古島で実験を続けている。
  5. 一般的な工法として緑化は世界的トレンドになっている。ただ日本は値段に汲々としているが、 世界の先端は緑化屋根のファイアレジスタンスとウィンドレジスタンスの研究にまでシフトしている。これはすなわち緑化は当然とした上で、もう一歩先のことを考えていることの現われだ。
  6. アメリカ中心ではあるが、リフレクティングルフいわゆるクールルーフも積極的。ただしヨーロッパはそれほど積極的ではない。

※ ※ ※

みなさんのおかげで、日本の防水はトップレベルではあるがトップではない。

今後、日本の防水材の進歩を誰が担ってゆくか。

今まではリードしてきたのは、設計者とそれを技術で支えたゼネコンの研究所の人たちだった。これからはどうか?今ゼネコンは一部を除いて、防水に関する技術力は明らかに落としている。外国はもともと防水コンサルタントがいたから彼らが防水の技術力を担保してくれた。日本ではコンサルタント能力のある人は沢山いるが、制度としてないから、防水メーカーの皆さんが力をつけてくれるしかない。日本では今技術移転の方向がメーカーの方に重心が移りつつある。皆さんへの期待は大きい。

防水はこれからは世界に発信していかなくてはならないし、 世界をキャッチアップだけ目標ではいけません。

私は定年まで後2年(2008.6月当時)。建築の学生は亀の甲がにがてなのがほとんどで、メーカーに入りたがらない。せいぜい希望してもセメントや鉄鋼業界。だから将来のことを考えれば、防水メーカーの若手を育てた方がよさそうだ。建築家が建築のことだけ勉強しても技術は発達しない。皆さんがは化学の分野だからモノつくりは得意だ。 ただその視点だけだと建築の後追いになってしまう、値段を下げる競争に終始してしまう。

大事なのは建築と化学といった、ちがう分野がクロスすることである。そこで技術がぐっと進みから、そのチャンスを作ることに力を注ぎたい。今化学のエンジニアを対象にしてのための建築・防水セミナーを計画している。ここにいる人たちの年齢ではもう手遅れだから(笑)、会社の若い人たちをよこして欲しい。皆さんと力を合わせて、頑張っていきましょう。

今日は満月

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ルーフネットは、ほぼ週刊ウェブマガジンです。「ほぼ週刊」というのは、編集長のいい加減さとは違って、月のフェイズに合わせているからです。つまり新月号、上弦の月号、下弦の月号、満月号のほぼ月4回。「ほぼ週刊」となります。この形になったのが、昨年の6月12日号=第1号です。本サイトの「バックナンバー」から読んでください。それで現在は60号。記事を書き始めたのは2006年8月1日です。時々、当時の記事を読み返し反省・復習します。時々、バックナンバーからでは見つけられない「お薦め記事」を紹介します。

2011/08/14(日) 08:13:05|防水工事と環境保護|

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