「今の防水業界がこれでいいのか」「いい仕事をすること、社会的貢献をすることと、防水工事で利益をあげることは両立すべきだ」と考えるあなたに!

保存か建て替えか 中銀カプセルタワービル

保存か建て替えか 中銀カプセルタワービル

保存か建て替えか 中銀カプセルタワービル

カプセル 第1回 DSC08971

雨が降ったらバケツやごみ箱で雨漏りを受ける。そんな景色は今や漫画の世界だけのように思えるのだが、それが東京・銀座一等地の集合住宅で、当たり前のように行われている。

そのマンションの名は「中銀カプセルマンション」こと「中銀カプセルタワービル」。昭和47年(1972年)竣工。黒川紀章の初期の代表作で、当時世界的に話題になった「メタボリズム建築運動」の世界初の実用建築である。

月刊「リフォーム」2016年10月号から、保存か建て替えか、で紛糾する世界的に著名な中銀カプセルタワービルの連載が始まった。本コーナーでは、その記事を転載させていただく。

保存か建て替えか 中銀カプセルタワービル ①

(株)テツアドー出版 月刊「リフォーム」2016年10月号より
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2016/10/18(火) 20:46:53|歴史的建物を守る|

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そもそも中銀カプセルタワービルってどんな建物?

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建築としての中銀カプセルタワービルの価値、という視点なら日本建築学会や日本建築家協会、docomomo Japan などの保存要望書に簡潔に述べられている。建築学会とJIA・日本建築家協会の要望書から、ハード部分に関する記述を要約してみよう。

「これまでの現場で鉄骨をくみ上げ、あるいはコンクリートを打設して建築を作り上げる方法から変わり、量産可能なユニットを一つの個室カプセルとして工場で製作した。エレベーターや階段などを含む、コアとなる鉄筋鉄骨コンクリート造の二本のインフラストラクチュアーとしての塔にボルトで取り付けるという画期的な工法がとられた、又個室カプセルの配管は二本のコア外部に露出設置された設備配管と接合されるようになっており、設計者によると、もし同様のコアが他の都市に作られた場合、カプセルごと移動し、付け替えられることが想定してあった」

具体的に,どんな構造なのか。この号ではカプセルを愛してやまない中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト代表の前田達之さんに説明していただき、黒川紀章著作集第1巻、第17巻主要作品図録および竣工直後の新建築の記事、日高仁氏のUIA2011Circular「中銀カプセルタワー」で確認しながら紹介した。

前田達之さんは、2010年に最初のカプセルを取得以来、2011年から中銀カプセルタワービル管理組合法人で監事を務め、ビルの保存・再生を実現するために管理組合、管理会社、オーナーと交渉を続けている。2014年に中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトを立ち上げ、現在13カプセルのオーナーでもある。

給排水、給湯、冷却水往復、ドレンがコアシャフト内の竪管に繋がる。この配管やカプセルのジョイント、また少し引いてカプセル全体を見るとカプセル1個1個が大きな細胞核を持つ細胞に見えてきて、人体模型を見ているような不思議な気持になってくる。この細胞の1一つ一つが取り換えられ、あるいは修理されて新陳代謝(メタボリズム)されていく姿が、容易に想像できる。黒川先生の難しい建築思想とは無関係にカプセルを見ているだけでメタボリズムを実感できるというものだ。

月刊「リフォーム」2016年10月号から、保存か建て替えか、で紛糾する世界的に著名な中銀カプセルタワービルの連載が始まった。本コーナーでは、その記事を順次転載させていただく。

保存か建て替えか 中銀カプセルタワービル ②

そもそも中銀カプセルタワービルってどんな建物?

(株)テツアドー出版 月刊「リフォーム」2016年11月号より
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黒川紀章は25年で、カプセルの取り換えを想定していたが、すでにその期間を更に20年を越えている。「保存か建て替えか」のポイントは、耐震性、コアとカプセルの隙間から浸入した雨によるカプセルを固定するジョイントの腐食、カプセル本体の漏水とアスベスト飛散、配管の交換、などである。手をこまねいていれば劣化は進む。今建築家のみならず、「カプセルを残したい」という建築にかかわりのいない個人の想いの連鎖が保存運動を急加速している。建築と住み手がどう付き合ってゆくか、又とないケーススタディが世界中のまなざしの中で進んでいる。

2016/11/16(水) 23:04:03|歴史的建物を守る|

保存か建て替えか 中銀カプセルタワービル 3

メタボリズムは知らなくてもカプセルは好き。

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自己表現の技に長けた饒舌な建築家の言葉はしばしば凡人を途方に暮れさせる。中でも群を抜く黒川紀章は、「私の建物がなくなっても私の思想は残る」といって100冊の著作を残した。(黒川建築都市設計事務所のサイトで、国内56の、海外44の著作のリストがみられる。http://www.kisho.co.jp/page/315.html)

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8条からなる「カプセル宣言」がある。「従来、社会を構成する単位は夫婦であった、しかし今や(注:ホモ・モーベンスの発刊は1966年)その単位は個人である。個人の空間とは何か」黒川紀章はこのことを見つめることが、カプセル論のスタートになるとした。

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カプセルは変化し、居住者は様変わりする。中銀カプセルタワービルの居住者の中に、メタボリズムというイズムとは無縁だが、カプセルを愛し、ひたすら存続を願う人が現れ、増殖し、そんな居住者がばしば、カプセル内の飲み会で話し合う。保存運動が立ち上がり、賛同者が幅広く集まる。いったん否決されたカプセルの交換を含む大規模修繕を再提案し、有志による修繕を実施してしまう。

黒川紀章は「我々が追球したいのは、住民の参加、住民のセルフエイドシステムを刺激する原理」といった。今カプセルの住人は、しっかり「刺激」され、「セルフエイドシステム」が発動し、「オーナーズエイド」が動き初めている。

月刊「リフォーム」2016年10月号から、保存か建て替えか、で紛糾する世界的に著名な中銀カプセルタワービルの連載が始まった。本コーナーでは、その記事を順次転載している。今回は3回目、2016年12月号より。

保存か建て替えか 中銀カプセルタワービル ③

メタボリズムは知らなくてもカプセルは好き。

(株)テツアドー出版 月刊「リフォーム」2016年12月号より
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2016/12/16(金) 21:50:05|歴史的建物を守る|

保存か建て替えか 中銀カプセルタワービル 4

カプセルのセルフエイド

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交換も十分な修繕もされないまま、注目度だけは益々高まる建物にセルフエイドの手が入った。

満身創痍のカプセルタワーは、あちこちに漏水補修らしき工事の痕跡が見える。ところが、そのどれもが、各オーナーが思い思いの方法で、発注し、施工されたもので、管理組合として大規模改修として実施したものではない。てんでに穴やひび割れをふさぎ、窓やルーバーを付け、エアコン配管の穴をあけたのだ。その結果、安全のためにネットを張らざるを得なくなってしまった。今回の防水工事は、管理組合が行ったものではないが、管理組合の承認を得て7人のオーナーが共同で実施したものだ。このことの意義は大きい。

防水工事に当たった(株)マルトクの鈴木哲男社長に工事の様子を聞くことができたので、その内容を紹介する。

ビフォー

アフター

カプセルの取り壊しが現実味を帯びてくるのは、ミレニアムの2000年を過ぎたころからである。2005年12月にJIA日本建築家協会が、2006年3月にはDOCOMOMO Japanが、さらに2006年7月にはJIA日本建築学会が中銀カプセルタワー管理組合と中銀マンション(株)に対して、建物の保存要望書を提出した。多くのテレビや雑誌が取り上げた。この時、筆者を含めて、多くの人はなぜ設計者自身がカプセル交換に乗り出さないのだろう、買い取ってでも修理をすべきではないか、と思ったはずだ。

しかしカプセルの交換を誰よりも望んでいたのは黒川自身だった。2007年に発刊された「東京人」(都市出版)2月号に「世界に誇るメタボリズム建築中銀カプセルタワーの行方は?」という黒川へのインタビュー記事が掲載されている。ここで黒川紀章は「これまでメンテの相談はなかったのか」という質問に対して「10年前(1907年)から私と大成建設で、カプセル交換の要望書、危険通告、警告、取り壊した場合とカプセル交換した場合の工事費比較表などを管理組合に提出している」と応えている。

黒川事務所によるカプセルタワーの修繕案は2種類、2002年と2006年に管理組合に提出されている。

マルトク工事

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月刊「リフォーム」2016年10月号から、保存か建て替えか、で紛糾する世界的に著名な中銀カプセルタワービルの連載が始まった。本コーナーでは、その記事を順次転載している。今回はその4回目、2017年2月号より。

保存か建て替えか 中銀カプセルタワービル④

カプセルのセルフエイド

(株)テツアドー出版 月刊「リフォーム」2017年2月号より
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2017/02/13(月) 18:06:38|歴史的建物を守る|

保存か建て替えか 中銀カプセルタワービル 5

黒川紀章と「水コンペ」の話し

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保存か建て替えか、で紛糾する世界的に著名な中銀カプセルタワービルの連載が、月刊「リフォーム」2016年10月号から、始まった。本コーナーでは、その記事を順次転載している。今回はその5回目。

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東京・銀座名建築を保存するためのトークイベントが行われた「銀座レトロギャラリーMUSEE(ミュゼ)

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トークイベントで「そのための7つの方法」を語る、中銀カプセルタワー保存・再生プロジェクトの前田達之代表。

昨年の水コンペ
昨年の「水コンペ」表彰式パーティーでの講評。

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2017年月刊「リフォーム」3月号より

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黒川紀章と「水コンペ」の話し

(株)テツアドー出版 月刊「リフォーム」2017年3月号より

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2017/03/17(金) 02:44:49|歴史的建物を守る|

保存か建て替えか 中銀カプセルタワービル 6

中銀カプセルタワービルを保存する7つの方法

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銀座1丁目、昭和通りに面した角に、4階建て築70 年の建物がある。これが銀座レトロギャラリーMUSEE (ミュゼ)だ。このビルを会場に、2017年1月4日(水) 2月19日(月)MUSEEexhibitionsí銀座、次の 100年のためのスタディ展」が開催された。期間中、屋上を含 む全館での展示や6回のトークイベントが行われ、2 月11日にはゲストに前田達之氏(中銀カプセルタワー ビル保存・再生プロジェクト代表)が招かれて、「中銀 カプセルタワービル〜名建築を保存する7つの方法〜」 と題し講演した。

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月刊「リフォーム」2016年10月号から、保存か建て替えか、で紛糾する世界的に著名な中銀カプセルタワービルの連載が始まった。本コーナーでは、その記事を順次転載している。今回はその6回目、2017年4月号より。

表紙

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中銀カプセルタワービルを保存する7つの方法

(株)テツアドー出版 月刊「リフォーム」2017年4月号より

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2017/04/15(土) 12:15:03|歴史的建物を守る|

保存か建て替えか 中銀カプセルタワービル 7

創った人 愛する人 守る人

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「中銀カプ セルタワービル」は世界遺産になりうる建築であり、日本発のムーブメン トであるメタボリズムを代表する建築である。2007年に管理組合は建て替えを決 議した。ところがどっこいまだ立っている。黒川紀章設計であるという理由で関心を示さない設計 者や、「えっ!まだ建っているの?」という建築関係者、「黒川紀章が設計者である」ことを知らずに何やら有名 なカプセルに興味を示す人たち、黒川紀章もメタボリズ ムも知らないがカプセルタワーが大好きで集まる若者た ち。満身創痍の名建築を取り巻く空気は「建て替えやむ なし」感が濃厚だった2007年と比べて10年後の今、 大きく変わっている。 連載7回目の最終回は「中銀カプセルタワービルを、創った人 愛する人 守る人(戦う)人」でひとまず締めくくりだ。

2016年10月号から始まった、連載「①保存か建て 替えか中銀カプセルタワービル」はその後、2016年 11月号で「②そもそも中銀カプセルタワービルってどんな建物?」、12月号で「③メタボリズムは知らなくて もカプセルは好き」、2017年2月号で「④カプセルの セルフエイド」、3月号で「⑤黒川紀章と水コンペの話」、 4月号で「⑥中銀カプセルタワービルを保存する7つの方法」を掲載してきた。このうち②ではカプセルの構造 や修繕案、④では2016年末に行われた修繕工事の 内容を紹介した。

縄跳び

創った人・黒川紀章についてはは本連載①、②、③をご覧いただきたい。また人間黒川紀章がなぜカプセルタワービルを創ったのかを知りたければ曲沼美恵著「メディアモンス ター誰が黒川紀章を殺したのか?」650頁、がお勧めだ。著者はその前書きにこう記している。
「マスメディアの隆盛とともに大きな存在となり、彗星 のごとく去っていった建築家、黒川紀章。その人生は、あたかも「日本」を映し出すメディアのようでもあった。 奇跡と言われる復興を遂げ、丹下健三を「世界のタンゲ」 にした日本が黒川をただのドン・キホーテにした。その劇的な人生の幕が閉じられたのは2007年10月12日。選挙に出た時、彼の体は末期ガンに冒されていた。それでもなお、彼は舞台に立とうとした。饒舌だった建築 家が黙して語らなった謎めいた行動のわけを知るには、 もう一度、彼の人生を、最初から辿りなおさなくてはならなかった。」

愛する人・中銀カプセルタワー応援団の関根夫妻。
2005年の11月からカプセル住民となった関根夫妻。「最初の3年間は二人きりで孤独に、でもそれなりに楽しい週末を過ごしていたのですが、2008年5月から思い切って自分たちもブログを始めてみました」という。週末だけ過ごす関根夫妻が、タワーが保存されること を願いつつ、中銀カプセルタワービルでの出来事を綴ったのが「中銀カプセルタワー応援団」ブログだった。このブログを通じてカプセル内のまた外部のカプセル好き が出会う。興味のある人たちを自分のカプセルに案内し、穏やかに、丁寧にその魅力を伝えてきた。その数は300 回、500人を超える。全140個のカプセルの中で状態 が良く、かつオリジナルの形を留めている住戸は多くは ない。関根さんのカプセルはその中の数少ない一例だ。 「わが応援団は、ただカプセルが保存されることを祈り ながら、みんな集まってビールをグビグビ飲むだけの団 体」と関根さんはいうが、その「ひたすら祈る」活動が、「ひたすら祈るだけ」だったからこそ、保存・再生プロジェクトや銀座たてもの展などが活躍する、次のステップにつながっていったといえる。

守る人、あるいは戦う人・「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェ クト」前田達之代表。
2010年に初めてカプセルを取得。2011年より中銀 カプセルタワー管理組合法人で監事を務め、ビルの保存・ 再生を求めて、管理組合、管理会社、オーナーと交渉 を続けており、現在14カプセルのオーナーでもある。「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトの目的は、この歴史的建築物を、後世に末永く引き継いでいくことであり、その実現のために ①建物を使い続ける ために、カプセルのオーナー、管理組合に対し、適切な 修繕活動を促進する ②カプセルの価値を高めるために、 新たな使い方を提案する ③建物の認知を高めるために、 幅広い広報活動に力を注ぐ」としている。その活動を銀座に欠かせない建物として、「銀座たてもの展実行委員会」すがわらたかみさんがサポートする。

この連載の目的は、満身創痍のカプセルタワーを前に、 この建物を「残したいか残したくないか」、「残すべきか 残さざるべきか」、「もし残すとすれば、どうすればよい か」、「防水・雨仕舞に関わるものとして、残すとすれば 何ができるか」を考えることである。  カプセルの修繕・交換を誰よりも望んだのは黒川紀章 だった。カプセル交換の要望書を書き、危険通告し、修 繕計画案を提出し、工事費比較も示し、黒川紀章のブラ ンド力を利用したファンドの提案を行い、住戸の買い取りまで始めたが、2007年管理組合によって否決された。 黒川が末期がんに侵され、選挙戦に破れ、人生の幕を閉じたのは2007年10月12日だった。 近現代の名建築である中銀カプセルタワービルは、仮 に世界遺産として保存が決まったとしても、これまでの 国宝・重文建築物のように創建時の構造、部材に手を加えない、というあり方は難しいかもしれない。そもそも 建物自身がメタボリズム・新陳代謝、カプセルの交換を 前提としているのだから。黒川紀章は、「私の建物がな くなっても私の思想は残る」といって100冊の著作を 残した。(黒川紀章建築都市設計事務所のサイトで、国 内56の、海外44の著作のリストがみられる。http:// www.kisho.co.jp/page/315.html)

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カプセルは変化し、居住者は様変わりする。黒川紀章は「我々が追球 したいのは、住民の参加、住民のセルフエイドシステム を刺激する原理として成長し、変化する建築である」と いった。リフォーム関係者はしばしば「建築家は改修を 考えた設計を新築時にするべきである」というが、黒川 のこの言葉は「住み手がその建築に住まうことによって、自らの住まいとその改修のあり方を真剣に考えてしまう 建築」と読み替えていいのだろうか。 今、中銀カプセルタワーの住人は、しっかりカプセル タワービルという建物に「刺激」され、「セルフエイド システム」が発動し、動きだしている。その動き方は、 黒川が「共生の思想」の中の「共生の思想とメタボリズ ム」の章で示した形とは、ほんの少しずれがあるかもし れない。しかしカプセルタワービルの居住者の中に、メ タボリズムというイズムとは無縁だが、カプセルを愛し、 ひたすら存続を願う人が現れ、増殖し、そんな居住者が しばしば、カプセル内の飲み会で話し合う。保存運動が 立ち上がり、賛同者が幅広く集まる。いったん否決され たカプセルの交換を含む大規模修繕を再提案し、有志に よる修繕を実施してしまった。管理組合の反対派もその 成果を無視できない状況になりつつある。

かつて改修工事は困難で、挑戦的で、利益も上がるマー ケットであった。新築工事の減少、ストックマーケット の増加、職人不足などの要因から、リフォーム市場はさ まざまな欲がうごめくダークな業界というイメージが広 がっている。建物保存、住人目線で工事に取り組む挑戦 的な工事店や設計者は少ない。そんな現状で、今銀座8 丁目に建って、治療を待っているカプセルタワーをリ フォームビジネスの目で見れば、アンタッチャブルと言 われて当然だ。面倒で経費面での手離れの極めて悪 そうな仕事だからである。しかし世界遺産になりそうな建物が、雨漏りが原因で壊されることを、防水やリフォームを生業とするものが手をこまねいてみていていいもの だろうか。「難しい・できない」仕事に挑戦して喜ばれ、 儲け、やりがいを感じて、育ってきたのがリフォーム業 界ではなかったのだろうか。 大規模修繕のあり方を模索する際、中銀カプセルタ ワービルはある極端な例ではあるが、修繕工事の新しい進め方を示している保存・再生運動の極めてピュアな例として、半身でもいいから、保存・再生プロジェクトに足を突っ込んで、遊び心を失わずに研究することで得られる成果は想像以上に大きいはずだ。
 黒川の思想は時代の先を行き過ぎた、と言われる。 10㎡140個のカプセル。その中の一部のカプセルの中で始まっているこの動きは、恐らく意識せずに黒川の思 想に追いついた人たちの発見・驚き、喜び、化学反応なのかもしれない。
 
月刊「リフォーム」2016年10月号から、保存か建て替えか、で紛糾する世界的に著名な中銀カプセルタワービルの連載が始まった。本コーナーでは、その記事を順次転載している。今回はその7回目、最終回。2017年5月号より。

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創った人 愛する人 守る人

(株)テツアドー出版 月刊「リフォーム」2017年5月号より
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2017/05/14(日) 21:08:16|歴史的建物を守る|

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