「今の防水業界がこれでいいのか」「いい仕事をすること、社会的貢献をすることと、防水工事で利益をあげることは両立すべきだ」と考えるあなたに!

保険⑤

火災の消火で漏水どころか天井まで落ちてきた

防水改修工事と保険の話:事例⑤

コンクリートは燃えなくても漏れる。
火災被害より甚大な水被害。

えいかんどう疎水

南禅寺の水路閣を渡った琵琶湖疏水の水は、トンネルを抜けて永観堂の裏山に顔を出す。取水口から取り出された一部はツララをくぐって、永観堂幼稚園の庭に流れ込む。(写真は記事とは関係ありません)


「火事の被害は火よりも水だ」とはよく聞きます。こんな質問が寄せられました。
東京都下の13階建てのマンションの11階に住むの知人の体験談です。

頭上の12階の部屋で火災。消防車による放水で鎮火。
消防署員が持ってきてくれたブルーシートを広げ、水の被害に対応。
延焼による被害はなく、翌日、漏水も落ち着いてきたのでブルーシートも片付けほっと一息していたところ、突然、寝室の天井が大量の水とともに落ちた。

火元の保険では保障されないし、火元に請求できないって…ホント??

修理費の見積もり300万円は、被害者であるはずの住人が負担。
マンションの管理組合からお見舞金5万円のみ。
せっかく、退職金でローンを完済したところだったのに。
自分の保険はこのような事故?は保障の範囲に入っていなかった。

ちなみに火元の住人ご主人様は残念なことに死亡。
マンションのローンは死亡により完済(?)
ベランダへ出て難を逃れた奥様は新居へお引越しとか。

防水保険の専門家、損害補償センター浅倉研所長に聞いてみましょう。

巷によくある話なんですが、ニュースにもならないので知られていない話でもあります。
まずはマンション、RC造という建物の概念から「燃えない」という意識が強いようです。
確かにRC造の建物は木造のように次々と延焼をしていくことはありません。
しかし「燃えない」と「漏れない」はまったく別物の話でありまして、消火作業による大量の水は階下に次々と大量の漏水を引き起こすことになります。

では、この事例のような火災事故をどう考えたらよいのでしょうか?

火元の保険では保障されないし、火元に請求できないって…ホント??

日本固有の法律に「失火の責任に関する法律」…失火責任法というのがあり一口で言うなら「単純な過失で起こした火災事故については延焼した部分については、損害賠償をしなくてよろしい」ということになっております。

この事例の火災が単純過失であった場合にはこれが適用されますので、火元に「弁償しろ」と請求をすることはできません。

しかし、これが天ぷら油の入った鍋を加熱しながら長電話で火事を起こしたなどは、重過失ということにり、損害賠償請求を起こすことが可能です。

また、火災ではなくガス爆発であった場合にも「失火」ではないことから賠償請求を起こすことが可能です。

では、現実的な処理としてはどうなのでしょうか?

修理費の見積もり300万円は、被害者であるはずの住人が負担。マンションの管理組合からお見舞金5万円のみ。せっかく、退職金でローンを完済したところだったのに。自分の保険はこのような事故?は保障の範囲に入っていなかった。

この状況から、11階の住人の方は建物にも家財道具にも保険に加入していなかったと判断されます。消防の放水は消火作業の一環ですから単純な火災保険に加入していればその放水被害による部分は保険の支払い対象となります。

ローンを完済したと同時に自分が加入していた長期の火災契約も解約したのでしょうか?

通常は住宅ローンと同期間の火災保険にマンションを購入した時に加入しているはずですが、この点をしっかり再確認する必要がありますね。

もう一つの可能性として12階の住人が入っていた火災保険に最近の新しい火災保険だと「類焼損害補償特約」というものがついていることがあります。

これは今回のケースのように責任は生じていないけれど近隣に迷惑をかけてしまった場合に、一定金額で(今回ならば300万円)をお支払いしますよという特約です。

小さい子や年寄り(60歳以上の高齢者)―編集長、私らは社会的認知としては、もう高齢者なんですよ―がいる家庭ではこの特約を付けた方がいいでしょうね。事故の原因は過半が子供と高齢者なんですから。

今回は消火作業による放水の結果の漏水事故ですが、日常的には洗濯パンの排水口や台所、トイレ、ふろ場などの水回りからの漏水事故は頻繁に発生しております。

特にマンションにおける漏水事故は建物の老朽化と共に避けては通れない問題ですから、これらの諸問題を住人個々の責任として片づけていると大問題になりかねません。

ちなみに火元の住人旦那様は残念なことに死亡。マンションのローンは死亡により完済(?)ベランダへ出て難を逃れた奥様は新居へお引越しとか。

道義的な問題は別として、残された奥様にとってはローンは旦那様の死亡という現実のお蔭で「保険により完済」されたところへ、旦那様の生命保険が入ってきたりすれば、離れた新居へお引っ越しは最善の策ですね。地元で肩身の狭い暮らしをするよりは精神衛生上も良いでしょうから。

11階の住人さんには300万円で済んだことが不幸中の幸いでしょうか?
広範囲に漏水が広がり屋根、壁、床、つまり専有部分は全てダメなんていう被害になっていたら、家財道具もそれなりに被害を受けてしまいますから、その損害はあっという間に1千万、2千万になります。

年間で1万か2万の保険料を払っていれば300万でも一生分の元がとれました…って、タラレバ話ではありますがでもそれが現実ですよね。

(この項続く)

※※※

工事店経営上、リスクヘッジのための保険は欠かせません。
でもその保険が、適用されるのはどんな時?
いざ事故が起こった時、あれやこれやの条件が絡みつき、出ると思っていても出なかったり、それを保険会社側もよくわかっていなかったりします。保険は万能ではないし、さらに見かけの掛け金の高い安いだけで、工事保険を選べないのは一般の医療保険と同じです。

ルーフネットは、防水工事に特化した保険代理店業務を35年前から行っている東京損害補償センター浅倉研所長から、さまざまな事例を聞き出し、報告してゆきます。

2011/02/10(木) 08:23:49|集合住宅改修 !&?|

火災の消火で漏水どころか天井まで落ちてきた・続

若王子の滝

結氷する若王子山の滝。永観堂の山(墓)をくぐった琵琶湖疏水は若王子(にゃこうじ)で地上に出る。ここは哲学の道の起点。銀閣に向かわず右にそれて山道を登ると若王子神社。さらに凍った滝を左に見て山頂に至ると新島襄の墓がある。(写真は記事とは関係ありません)


防水専門保険代理店東京損害センター浅倉所長談

建築学的に火災事故をとらえた場合ですが、昨年発生したUR(旧住宅公団)の新築現場の火災事故ではURはRC構造の建物に火災による強度劣化が発生していないかどうかをコア抜き検査などで綿密に調査をしました。

結果は熱による劣化の心配はないと判定されたので、損害額はぐっと圧縮されましたが、今回の建物火災でも厳密に考えると人が死ぬほどの火災事故だったのですから、躯体に対する影響はきちんと測定すべきですよね。

現実としてはおそらく目視レベルで「問題なし」と判定されてしまったと思われます。

また防水技術面からみれば、鎮火後相当日数を経過してから天井が抜け落ちるという現実に、専門家として事前の警告が出せるシステムがほしいですね。

現実に11階のお宅では天井だけでなく、内壁(下地がボードで壁紙仕様の場合など)にも被害があるはずですし、床のフローリングも下側に水が回っているでしょうね。

消防署が敷いたブルーシートは水が全面漏水せず、壁面で壁を伝って更に階下に落ちるようにしたようなものでしょうから下階の被害も確認したいところです。

※※※

工事店経営上、リスクヘッジのための保険は欠かせません。
でもその保険が、適用されるのはどんな時?
いざ事故が起こった時、あれやこれやの条件が絡みつき、出ると思っていても出なかったり、それを保険会社側もよくわかっていなかったりします。保険は万能ではないし、さらに見かけの掛け金の高い安いだけで、工事保険を選べないのは一般の医療保険と同じです。

ルーフネットは、防水工事に特化した保険代理店業務を35年前から行っている東京損害補償センター浅倉研所長から、さまざまな事例を聞き出し、報告してゆきます

2011/02/13(日) 08:20:49|集合住宅改修 !&?|

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