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琵琶湖疏水 南禅寺水路閣報告書

琵琶湖疏水 南禅寺水路閣報告書

間もなく最終報告書

南禅寺水路閣

ルーフネットが南禅寺の水路閣を撮り上げるのは、水路閣が日本人が自力で成し遂げた明治の近代産業遺産である巨大プロジェクト「琵琶湖疏水」の象徴に思えるからです。この完成までの記録を読むとNHKが放送していた「プロジェクトX」の10倍くらい感動できます。またこの疏水の琵琶湖側の取水口は「防水の祖神」を祀る近江神宮と三井寺のすぐそば。琵琶湖から流れ出した疏水は山中、トンネルをくぐり洛中に初めて顔を出すのがローマの水道のような南禅寺の水路閣なのです。途中には日本初の鉄筋コンクリート橋や、魅力的な煉瓦造の建物が散在し、あちこちで防水・止水工事が行われています。ルーフネットがその存在価値を叫んでいる防水・止水工事が歴史的建造物の維持・保全を通して世の中のお役に立っているからです。 

水路閣は琵琶湖疏水の疏水分線の一部で、全長93メートル、幅4メートル、水路幅2.4メートル、2基の橋台と13基の橋脚からなる水路橋であり、明治21年に完成した。平成8年には国の史跡に指定されています。沿線各地での水力利用、田畑の用水、防火用水等を主目的として設けられた疏水分線の一部である水路閣は、南禅寺境内を東西に横断するため、意匠において美観上の配慮がされています。レンガと花崗岩で築かれたその姿は、工事中の当初から見物客が絶えず、いまでは付近の歴史的な景観と調和し、観光客は南禅寺よりも水路閣がお目当ての人が多いくらいです。

8月16日の記事で、この水路閣で発見されたひび割れ対策に関して以下の記事を第一報として紹介しています。

以下、ルーフネット8月16日の記事より。

京都市上下水道局は、国の史跡に指定されている水路橋「水路閣」の西側橋脚の一部に生じたひび割れの発生原因及び修復の方法を調査・検討するため、学識経験者で構成する「水路閣改修調査検討委員会」を平成22年1月に設置し、これまで3回開催して議論を進めてきた。最終的には、調査によって得られた知見を基に、議論の内容を踏まえ、今後の対応策を報告書にとりまとめる。

なお、西側橋脚の一部に生じたひび割れについては、平成20年8月に緊急防護工事を実施した後、継続して状況を監視し、特に変化がないことを確認している。

委員構成は次の通り京都市上下水道局水路閣改修調査検討委員会委員
石田潤一 京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科教授・委員長
伊津野和行 立命館大学理工学部都市システム工学科教授
久保田善明 京都大学大学院工学研究科准教授
甲津功夫 大阪大学名誉教授
中嶋節子 京都大学大学院人間・環境学研究科准教授
深町加津枝 京都大学大学院地球環境学堂景観生態保全論分野准教授
◎ 京都府教育庁指導部文化財保護課(オブザーバー)
◎ 京都市文化市民局文化芸術都市推進室文化財保護課(オブザーバー)
◎ 財団法人 建築研究協会(疏水水路閣調査委託

京都市上下水道局 水路閣改修調査検討委員会 報告書案

京都市水道局のサイで、今年年6月17日に 京都市国際交流会館 第1・2会議室で開催されたこの委員会の議事録と報告書案がアップされています。
京都市上下水道局 水路閣改修調査検討委員会 報告書案は↓で見ることができます。
http://www.city.kyoto.lg.jp/suido/cmsfiles/contents/0000078/78845/dai3kaisiryou.pdf

最終委員会では、この報告書案に対する最終審議を行い、修正を検討しました。
報告書の中から関連部分のみ紹介します。前回掲載できなかった部分です。

出席者は以下の通り
(1)委員 石田委員長、伊津野委員、久保田委員、甲津委員、中嶋委員、(深町委員欠席)

(2)京都市上下水道局 鈴木技術長、三田村水道部長、土居水道部担当部長

(3)京都府教育庁指導部文化財保護課、京都市文化市民局文化芸術都市推進室文化財保護課、財団法人建築研究協会(調査受託業者)

(4)事務局 京都市上下水道局水道部施設課
今後の対応策に対する提言
(1) 水路閣の躯体は健全であることから、現状において大規模な改修の必要はないと考えられる。しかし、今後、水路閣が永くその姿を保っていくために、管理計画を作成し適切な維持管理を行っていくとともに、水路閣躯体の状況変化を的確に把握するためにモニタリングをしていく必要がある。

(2) 水路閣周囲の樹木を適切に伐採・剪定し、水路閣に対する影響が生じないよう計画的に管理していく必要がある。

(3) 管理計画の作成にあたっては、次の点に留意する必要がある。
①現在行っているクラックスケールによるひび割れ幅の計測に加え、 今回の調査で判明したひび割れや漏水箇所等の目視点検を適切な頻度で行い、記録する。

②今回の調査および今後のモニタリングの結果を踏まえ、必要な補修等の対策を検討し、適宜実施する。

③将来の本格的な改修に向け、周辺地盤の状況について適切なモニタリングの手法を検討し、実施する。

④樹木の管理については、樹種によって非常に根が深いものがあることを考慮する。

(4) モニタリングにより異常が把握された場合は詳細な調査を行い、正確な状況を把握したうえで改修等の対策を検討し、実施する。

(5) 史跡範囲からは外れるが、水路閣から上流部分に発生しているひび割れについては危険度が高いように思われるので、早急に対策を講じるべきである。

水路閣報告書

会議の最後に委員長は、審議結果を次のように集約しました。それを議事録から紹介します。

2.疏水水路閣調査の概要(6)ひび割れ調査の「水路閣から上流部分の煉瓦」というところについて、史跡外であるということをもう少しはっきり書いた方がいいのではないかという意見があった。これについては他の委員からは上流部分の亀裂の扱い方には以降重視して位置づけるべきという意見があった。

また同項について、「煉瓦体を貫通している可能性がある」という表現をもう少しわかりやすくしたほうがよいという意見があった。一部誤字脱字の指摘があった。

それから「柱」や「煉瓦体」、「アーチ」という表現が何を指すものか分かりにくいという指摘があった。地震の規模について、マグニチュード等の数値の根拠が分かりにくいのでマグニチュードの数値を書かないか「現在想定されている」という書き方にするべしという意見があった。または日本道路協会の道路橋示方書の最新の設計基準での照査というように、明記して地震の強さについては表現を考えるべしという意見があった。

提言の中で外観を損なわないようにということを明記すべきであるという意見があった。

モニタリング状況等市民に適切に知らしめる、ということが必要で提言の中で追記していただきたいという意見があった。

議事冒頭のFEM 解析モデルの再検討についてであるが、報告書案2.疏水水路閣調査の概要〔ひび割れ原因調査〕(9)構造解析②の中では、厳密ではない結論については削除する。3.調査所見(3)ひび割れの原因についても、「西側橋脚の水平方向の変位」の表現について削除あるいは文章の修正を行う。研究協会においては再検討の結果を上下水道局及び委員に連絡いただく。

間もなく微調整と事務手続きと最終報告書が発行されます。

2011/09/18(日) 09:43:06|歴史的建物を守る|

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