「今の防水業界がこれでいいのか」「いい仕事をすること、社会的貢献をすることと、防水工事で利益をあげることは両立すべきだ」と考えるあなたに!

2012年1月9日 号(№79)

2012年1月9日 号(№79) 画像の説明

2012年 睦月むつき 平成24年、昭和87年、大正101年、明治145年

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「燃土燃水献上図」を再現した模型(新潟県黒川郷土文化伝習館-2

謹賀新年 2012 元旦

人類と石油の関わりは、アスファルトをプラスチック(可塑性物質)として利用したことに始まります。西洋ではノアの方舟の防水、バベルの塔の接着・シール、モーセを救った葦の籠の防水として利用されました。これらは聖書の「お話」ではなく、考古学上の遺物として発掘されたり、同様の使い方がされていたという事がわかってきました。ということは「人類と石油との関係は接着と防水で始まった」といってもいいわけです。

日本ではやはり5~6千年前の縄文時代から、矢じりの接着、土器の補修コーティング、さらには、蔓を編んで、アスファルトと漆で覆ったらんたい容器が発掘されています。これはまさにナイルに流されたモーセを助けた葦の籠船の防水、古代海洋民族が乗り込んだ、アスファルトで防水したパピルスの船と同じ構造です。 しかし日本では人類初の防水材が記録に現れるのは日本書紀668年まで待たねばなりません。

昨年、日本書紀の「天智天皇に燃える土(アスファルト)と燃える水(石油)を献上した」という記述を絵画化した歴史画の父・小堀靹音(ともと)の作品が初めて一般公開され美術界でまた石油業界でも話題になりました。 もちろん防水のサイトであるウェブマガジン「ルーフネット」にとっては最大のニュースでした。

人間の生活の中で極めて重要な機能でありながら地味な存在であった「防水」。でも丹念に探せば、歴史や芸術作品の中に見つける事が出来ます。そしてそれを今の生活やビジネスに活かす事は可能です。「ルーフネット」は今年も、その道筋を探します。

           Webマガジン「ルーフネット」 編集部一同


ウェブマガジン「ルーフネット」2011年 FLASHBACK

ニュース

ルーフネットの重点項目「躯体保護と防水」とは 「防水も志を高く」 。

東京工業大学建築物理研究センター 田中享二 教授(当時)は日本の建築材料研究の第一人者で、1996年に「高分子系防水材の耐久性」で日本建築学会論文賞を受賞しています。10年以上前から、先生はこう言っていました.

コンクリートというものは水を通すものです。しかもひび割れのないコンクリートを作る事は現実的にはとても難しい。そのひび割れから水が入ってくると、中の鉄筋に悪さをする。もし水が入らなかったら、鉄筋コンクリートの建物はとても丈夫で、100年以上平気で持ちます。だから防水の役割は単に雨漏りを防ぐだけでなく、躯体を護り、建物を長く維持してゆくと言う、とても大事な役割を担っているのです。

ルーフネットでは、前身となるブログ「防水屋台村を創ろう」を立ち上げた2006年、最も大事なコーナーとして田中先生の「躯体保護と防水」を位置付けました。「防水も志を高く」と言う先生の言葉に共感したからです。そして「躯体保護と防水コーナー」の趣旨として、編集長はこう書いています。

なぜ水を通すのか、なぜひび割れが入るのか、どの位のひび割れでどれくらい水が入るのか?防水の役割は何か?コンクリートと鉄筋の性質を知って、防水工事に何が求められているかを考えます。

さて最近、世の中では「躯体保護」より「サステナブル」という言葉の方の方がよく目に着きます。講演会やセミナーの場で田中先生は、工事に携わる人達か、メーカーの営業なのか、技術者なのか、研究者か。聞く人に応じて、実に分かりやすく、防水の果たすべき役割を語ります。

例えば、職人さんたちの多い講演会では、こんな感じでした。

コンクリートは丈夫な建築材であるが、宿命的にひび割れる。このほかジャンカ、打継、コールドジョイントなど施工過程で弱い部分が生じ、ここからコンクリートの劣化が始まる。 誇り高いコンクリート技術者は「コンクリートの表面を保護する」と言うと、快く思わない。われわれの仕事をそんな彼らにどう説明すればよいか。今日はその方法をお知らせします。

詩になったアスファルト ~~瀝青の鏡~~  銀色の魚は瀝青(れきせい)の水中をよぎる

追加「瀝青の鏡」

「アスファルトは安全である」と訴えるより「アスファルトを美しいと感じる人がいる」ことに注目したらどうだろう。

防水のプロの間では性能面で高く評価されたとしても、現場で200度近い高温が必要な「熱アスファルト防水工法」が、今の時代に相応しいかどうかという点では、マイナス点はいくつも列挙できる。その一つ一つに反論していくことがはたして、効果的なのだろうか?

そんなことを考えていたとき、瀝青・アスファルトという「モノ」や「言葉」の美しさに対して好意を寄せる詩人や音楽家がいることに気づき、とても驚いた。

そういえば「窯の中のアスファルトが青緑にキラキラ光って、きれいなのだよ」と話してくれた老職人もいたではないか!

そうか。これは盲点だった。

この波紋がもしも青い羽根だったら、船は空を飛ぶかもしれないね
ぼくなら、一枚だけ羽をひろってペン軸をつくるな
泛子(うき)がゆらぎ、瀝青の水中を銀色の魚がよぎった
(瀝青の鏡より)

「鉱石倶楽部」
「瀝青の鏡」は鉱石フェチの詩人、長野まゆみの「鉱石倶楽部」(文春文庫2005年667円)におさめられている。

2011/02/21(月) 08:44:24|    |

津波の破壊力と茅葺きの驚異の浮上力 屋根は津波にも負けなかった

M9地震後第1波の津波で屋根部分だけ浮かび、流された 

築200年、気仙沼網元の家。M9地震後第1波の津波で屋根部分だけ浮かび、流された。

東京駅の屋根に使うはずだったスレートの準備をしていた、茅葺日本一の熊谷産業・熊谷さんの記事。
熊谷さんは自分のブログで、

施主によると「地震後第1波の津波で屋根部分だけ浮かび、流された」そうで、現在は屋根だけが取り残された状態になっています。「津波にも負けない立派な屋根をふいていただいた。ありがとう。」という、安否情報とともにお礼の連絡をうけました。

と、言っています。

がれきの山の中に残っていた柱や梁を利用して、ボランティアによって解体移築をするとのこと。

「日本民家は再建できます。このまま、震災ゴミとして消してしまわないで、宮城県の復興シンボルとしての残していければと思います。」(熊谷社長)

200年以上の歴史があり、明治、昭和の大津波にも耐え、漁港を見守ってきた網元の家。

ルーフネット編集部鶴川支局のお向かい「武相荘」の茅は、熊谷さんが北上川で集めたものだったそうです!!

2011/04/27(水) 00:00:33|屋根|

マーケット

タイル改修の巨大マーケットにどう取り組む? 毎年平均3千万平米のタイルが施工されているとすると、40年間で12億平米のタイル外壁ストックがある。

講師のイナックスエンジニアリング中島和幸氏は、外壁タイルのこれまでの出荷数から①外壁タイル貼りには大量にストックがある ②補修・改修の市場が大量にあることを紹介。

バブル期に建築された建物が約20年経過 → 補修・改修対象のタイル張の建物が多い →2008年4月の定期報告制度改定は、定期的に調査点検・報告する制度であるが、補修改修につながる可能性が高い。(「要是正」物件)。「要是正」の判定基準は「外壁タイルなどに剥離があること、又は著しい白華、ひび割れ、浮等があること」となっている。これは現実的にはほぼ100%の建物が要是正になる。

と言うことだ。

2011/05/19(木) 22:11:25|ニュース|

菅首相、「太陽光パネル1000万戸に設置」表明 ですって!! 屋根と太陽光発電マーケットのためのメモ

菅直人首相は25日(日本時間26日未明)、仏パリで開かれている経済協力開発機構(OECD)設立50周年記念行事で講演し、福島第1原発事故後の日本のエネルギー政策について、自然エネルギーの利用を推進し「1000万戸の屋根に太陽光パネルを設置する」との目標を掲げた。

菅首相は日本のエネルギー基本計画を「基本的に見直し」、2020年代のできるだけ早い時期に、全供給電力に対する自然エネルギーの割合が「20%を超える水準となるよう大胆な技術革新に取り組む」と表明。これを達成するため、太陽電池の発電コストを20年までに現在の3分の1、30年までに6分の1にまで引き下げるという目標を示した。

2011/05/26(木) 17:53:16|DATA BANK|

JWMA(日本防水材料協会)が社団法人化後初の総会

6月14日東京・四谷のスクワール麹町で第1期定時総会開催。「任意団体から、一般社団法人へと発展的改組し、新しい1歩を踏み出した。

主な事業計画
中国で開催予定の「第3回中日韓防水技術シンポジウム」への協力と、中国建築防水協会との連携強化。次世代型防水仕様書の検討。

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連合会が2010年の材料別防水材の出荷量を発表

2011/06/17(金) 08:46:33|DATA BANK|

技術

トンネル漏水問題を考えるシンポジウム トンネル漏水止水対策でマニュアル作成

トンネルの漏水対策は、そのトンネルの工法や、漏水の部位によって、適用する止水方法がさまざまな上、建築での止水とは全く異なる判断が求められることがあるという。そこでピングラウト協議会技術委員会(柿崎隆志委員長)は土木構造物のエンジニアリング会社である応用地質㈱トンネル技術部 太田裕之部長、清水建設土木技術本部 久保昌史主査、同技術研究所 小野正上席研究員らの協力を得て、このほど「ピングラウト工法適用上の留意点:トンネル編」を作成した。

同技術マニュアルは、A4サイズ8ぺージのコンパクトなものだが、トンネルの工法別特徴と、それに伴うひび割れや漏水現象の特徴、止水対策上の留意点を分かりやすくまとめたもの。

戸建住宅の地下室をめぐるトラブル

《建築紛争フォーラム》 日本建築学会の紛争フォーラム
―紛争解決に向けて、さらに予防へ―

地下に関わるトラブルのうち、「漏水」は最重要テーマです。しかし戸建住宅の地下室の漏水は、湿気と並んで悩ましい問題でありながら、屋根からの漏水程は話題になりませんでした。そこで、日本建築学会司法支援建築会議は、日本建築学会大会開催時に、広く建築紛争とその解決に寄与する司法支援建築会議の役割を知らせるために建築紛争フォーラムを開催した。今回は「戸建住宅」をテーマとして取り上げ、その土地固有の戸建住宅を巡る課題に焦点を当てた。

アジアから発信する防水技術

アジアから発信する防水技術 田中先生! 中国の防水シンポジウムはどうでした?

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と、帰国直後の田中享二先生を捕まえ、聞いてみました。(10月30日町田駅にて)

Q / ルーフネット : 10月25日中国杭州市で第3回中日韓防水シンポジウムが開催されましたね。どんな様子でした?

A / 田中 : 日本からは41名参加、全体では200人近くの参加が有った。例年通り午前中はそれぞれが、自国の防水事情・市場動向を、午後からは取組んでいる研究内容を報告した。
発表によると、まず中国はまだまだ急成長中であり、勢いは衰えていない。日本は横ばい。これは改修工事の伸びが新築の低迷を補っている。韓国は必死に技術を高めようとしており、限りなく日本に近づいているようだ。
Q /ルーフネット : 日本との違いは?

A / 田中 : トンネル・橋梁など土木分の発表が多かった。
Q / ルーフネット : 来年以降のシンポジウムの方向は?

A / 田中 : それから、次回から学会側のリーダーを早稲田大学の輿石教授に託す。実務面のサポートはJWMAにお願いしたい。

「屋根を読む」 世界の草ぶき屋根と雨仕舞

「屋根を読む」 世界の草ぶき屋根と雨仕舞 「雨の日の屋根は読み物である」と、防水研究の第一人者・田中享ニさんは言った。

9月30日学士会館でこの春東京工業大学を退官した田中享ニ教授の退職祝賀会が、教え子達によって行われた。
当日は、田中先生がパーティーの前に40年間の防水研究への取り組みを振り返って講演した。またこれまで書きためた屋根に関する随想を纏めた「屋根を読むー旅」と、3月に東工大で行った最終講義の講義録が記念品として参加者に贈られた。
「屋根を読むー旅」はA5版271ぺージ。この本について「まえがき」でこう述べている。

 雨の日の屋根は読み物である。一滴の雨粒が屋根に落ちて、いろいろな経路を経て軒先からしたたり落ちる。どんな屋根にもこれが書かれている。ただ最近の屋根は材料、構法が進歩したせいもあり、巨大化、複雑化して、読み物としては難解になってきている。一方、古くからある屋根は小さくて素朴であるが、材料が限定されているせいもあり、逆に構法としては洗練されているものが多い。全体を見通すことのできる優れた短編である。

 四十数年間、研究と教育の現場にいたが、巨大化、複雑化した技術の一部を教えたり、多少精緻に調べたりすることが日々の仕事であった。いずれにしても技術のほんの一部である。もしかしたら大きな方向で間違っているのではないか。研究に携わっている者ならば、潜在的にもつ不安である。そのためにはしっかりとした羅針盤をもつ必要がある。そう考えて機会があれば少しでも多くの屋根を、現地で読む事を心がけてきた。必ず現地に赴いたのは屋根が風土の産物であり、それの置かれている光と風と水のなかでしか読み解けない事が多いからである。

 屋根は大きく勾配屋根と陸屋根とに分類される。そのなかで勾配屋根を読む機会は多くあったが、陸屋根を見る機会はほとんどなかった。それが気になっていたが、昨年アフリカを訪れ、詳細を知ることができた。私の中では完結した。東京工業大学の退職を機に、他の出版物に投稿したものも含めて、それらを取りまとめてみた。屋根を読む手引書として、少しでも参考になったら、私の望外の喜びである。

2011/11/08(火) 10:20:31|屋根|

世界が注目する建築ユニットの最新プロジェクトのポスターに防水工事? 建築、アートがつくりだす新しい環境―これからの“感じ”

内覧会で作品解説する西沢立衛さん
10月28日の記者会見

妹島和世・西沢立衛。2010年にプリツカー賞を受賞し、現代建築界をリードする建築ユニットと、現代美術界注目の人気キュレーター長谷川祐子によるコラボレーションが今回の企画。

東京都現代美術館の展示ポスターの「防水工事らしき」絵柄に吸い寄せられた記者は、~~アーティストの提案は新しい世界感のメタファーとして建築家の実践的提案と響き合い、来るべき「人間性」についてのイメージを複数の角度から指し示します。~~なんていうパンフのキャッチコピーをみても、体育会系の頭の記者には、ちっともどんな“感じ”なのか掴めません。そこで記者会見で聞いてみました。

Q:ルーフネット編集長  建築がアートであり、「新しい環境をつくりだす」ということも理解できます。理念がクローズアップされる近年の建築プロジェクトのなかで、この企画展のポスターには、建築工事の中でもひときわ地味な防水工事らしき作業が大きく写っています。これは驚きでした。新しい環境をつくりだす~といっても、理念を提案するだけでなく、本気でとりくむには、生々しい作業が伴うと思います。これは勝手な解釈ですが、ポスターの写真に防水工事という汗くさい実務作業を採用した理由には、何かそのようなメッセージが込められているのでしょうか?

妹島和世さんはこう答えてくれました 。

「これからの“感じ”」と言う何かあいまいなテーマであるが、今回のテーマには、コラボレーション、「作る」と言う具体的な行為、形態の問題、ニーダーマイヤーさんの作品が醸し出す空気感、そんな色んな方たちの想いをふくらませるような写真を探した。

2011/11/09(水) 00:09:20|ニュース|

世界遺産 五箇山の民宿のおかみが、茅葺き屋根の雨仕舞を解説

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先月11月24日、NHKテレビの「あさいち」という早朝バラエティー番組で、世界遺産五箇山の合掌造りの茅葺き屋根の特集をしていました。民宿のおかみさんが、小屋裏を見せて「雨が降っても、降った雨がストローのように伝わって下に落ちないから、雨が漏らないんです。」と解説していました。
草を束ねて、積んだだけ、隙間だらけの屋根で雨を防ぐことができるのだから、確かに不思議です。
この不思議な仕組みに興味を持ち、防水の観点から解明しようとしたのが石川廣三(元東海大学教授)と田中享二(東京工業大学名誉教授)の両先生です。

2011/12/17(土) 00:12:12|屋根|

アーカイブ

2011年元旦のメッセージはこれでした。

日本書紀の天智天皇7年(668年)に、越の国(今の新潟県)から燃える土(瀝青)と燃える水(原油)が献上された、と記載されている。石油業界は日本書紀の記述を自らの業界の起源とし、小堀鞆音(ともと)や前田青邨にこのテーマで画を依頼した。「燃土燃水献上図」は古代から接着、防水などに使用されていた燃土=瀝青=天然アスファルトを出発点とする日本の防水業界にとっても、業界の起源と考えられる

ROOF-NETの今年の3大テーマ  

  1. 日本書紀に見る日本の防水の起源―668年天智天皇に燃土燃水を献上―
  2. 聖書と防水3部作―ぺルシャ、エジプトと聖書に先立つメソポタミアでの瀝青利用―
  3. 日本人の手による近代化の象徴―琵琶湖疏水にみるコンクリートと防水―

ROOF-NET ルーフネットは、防水に関わる人たちが,自信とプライドを持って仕事を継続できることを祈ります。そして今年も「防水のセレクトショップ」を目指します。

続・アスファルトもシート防水も塗膜防水も「防水の歴史は4千年」
日本の場合防水の歴史は、世界では4000年だが、日本に目を向けると、最古の文献として残っているのは西暦668年の以下の記録。

「日本書紀」《天智天皇七年(六六八)七月》◆高麗従越之路遣使進調。風浪高。故不得帰。以栗前王拝筑紫率。于時近江国講武。又多置牧而放馬。又越国献燃土与燃水。又於浜台之下諸魚覆水而至。又饗蝦夷。又命舍人等、為宴於所々。時人曰。天皇天命将及乎。
何と日本書紀だ。
毎年7月7日、天智天皇を祀る滋賀県大近江神宮で「燃水祭」が行われる。防水の歴史を語る時、必ず引き合いに出される「天智天皇に燃える土と燃える水を献上した」という故事に則り行われる祭典である。燃える土とは天然アスファルト。燃える水とは石油である。

 鮮やかな黒川燃水祭献上行列出発。写真撮影「日本防水の歴史研究会」
鮮やかな「新潟県黒川燃水祭」献上行列出発。写真撮影「防水の歴史研究会」。

「燃水祭」とはいえ、行列の順序は、日本書紀の記載通り、「燃土=瀝青」が「燃水=原油」より、先ですね。

昨年も「燃水祭」は盛大に執り行われ、石油業界から多くの人たちが参列、新潟県黒川村から運んだ燃える水を奉献し、日本書紀の該当部分を奉唱した。石油業界にとって天智天皇は「石油の祖神」であり、「燃水祭」は業界人として「石油の祖神」に感謝の祈りを捧げ、業界の繁栄を祈願する重要な行事となっている。この時代、天然瀝青は接着材、防腐剤、防水材として使われていた。防水業界にとって(道路業界にとってもなのだが)天智天皇は「防水の祖神」であり、近江神宮で行われる「(燃土)燃水祭」は「防水の祖神」に感謝の祈りを捧げ、業界の繁栄を祈願する重要な行事となるべきものではないか。まして天智天皇は「雨漏り」を心配してくれる歌を読み、その歌「あきの田の かりほの庵(いほ)の苫(とま)をあらみ わがころも手は 露にぬれつつ」は 百人一首の1番歌となり、その縁で、近江神宮はかるた大会の会場となり、「かるたの聖地」と言われる。

2011/01/05(水) 11:44:24|ARCHIVES|

「燃ゆる土とは天然アスファルト」と近江神宮が明記

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近江神宮「志賀」第264号

天智天皇を祀る近江神宮にとって、「燃える土(瀝青・アスファルト)と燃える水(石油)を天智天皇に献上した」という日本書紀の記録は、極めて重要である。我が国文献中に見る、アスファルト・石油の初見であるこの記述にもとづき、近江神宮は毎年7月7日、燃水祭を斉行している。

毎月発行されていた近江神宮の広報誌である「志賀」の7月号には、例年燃水祭に関する記事が掲載される。
吉田健一宮司は、この号では黒川村村史に触れています。「燃える土」の表現は瀝青の他にも石炭、泥炭とゆれていますが、ここで「燃土=瀝青=天然アスファルト」と近江神宮の宮司が明記したことは、防水業界にとって貴重ですね。

燃水祭で初。防水関係者による玉串拝礼。 防水業界からも7名初参加。

防水の祖神でもある天智天皇に玉串拝礼。

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手前・防水の歴史研究会。奥・石油業界紙代表。

毎年7月7日、天智天皇を祀る滋賀県大近江神宮で「燃水祭」が行われる。防水の歴史を語る時、必ず引き合いに出される「天智天皇に燃える土と燃える水を献上した」という故事に則り行われる祭典である。燃える土とは天然アスファルト。燃える水とは石油だ。

今年も「燃水祭」は盛大に執り行われ、石油業界から多くの人たちが参列、新潟県黒川から運んだ燃える水(7月1日の黒川燃水祭記事参照)を奉献し、日本書紀の該当部分を奉唱した。石油業界にとって天智天皇は「石油の祖神」であり、「燃水祭」は業界人として「石油の祖神」に感謝の祈りを捧げ、業界の繁栄を祈願する重要な行事となっている。

2011/07/09(土) 02:11:20|ARCHIVES|

若沖(じゃくちゅう)の美術館で、防水の起源に関わる画を見る 。

小堀鞆音の粘土燃水献上図を初展示する佐野市立吉澤美術館の自慢のコレクションは、実は若冲の菜虫譜(重要文化財)。ただし、修復作業に入ってしまったので今は、精密デジタル複写しか見ることができません。
とは言っても逆に、だからこそ普段では見ることのできない、ウルトラ拡大図を通して、繊細なタッチの秘密を発見できるというメリットもあり。これはこれで悪くない。

小堀鞆音展の記者会見で、初展示となるアスファルトの起源を示す画は、報道関係者の興味を引いた様です。
この画にもとづいたお祭りが、今でも新潟県黒川村と、滋賀県近江神宮で毎年行われているのですからね。
すでに紹介した毎日新聞のほかに産経新聞でも、詳細に報道されていました。 見にくいので、記者会見で配られた資料を再掲載します。

8月31日の記者会見で配布された資料

2011/08/25(日) 00:50:28|「日本書紀と瀝青」|

本日10月1日初公開 防水の起源に関わる画 毎日、産経に続き東京新聞でも大きく取り上げられました

東京新聞

佐野市立吉澤記念美術館より先週「東京新聞にも出たようです」と連絡をいただきました。WEBの記事を見て注文した掲載本紙が届きました。丁寧に取材していますね。写真も2枚使われています。

7月1に行われた黒川村での行列写真は、日本防水の歴史研究会森田喜晴事務局長が撮影し、8月31日に佐野市市庁舎で行われた記者会見のために提供したものです。

今年の献上行列の様子。服装や荷物の持ち方など小堀の作品を参考にしている=7月1日、新潟県胎内市で。

2011/10/01(土) 00:56:58|「日本書紀と瀝青」|

佐野市立吉澤記念美術館大看板展示の大看板のど真ん中に、「燃土燃水献上図」

東大名誉教授で小堀桂一郎さん(小堀鞆音摘男)による講演会は満席
小堀桂一郎氏(東京大学名誉教授・小堀鞆音嫡孫)による特別講演会

「小堀鞆音と歴史畫の問題」
日程:10月8日(土)
時間:午後2時~3時30分
講師:小堀桂一郎氏

講演後の質疑応答で、お聞きしました!

質問:ルーフネット森田

幾つかの新聞で、「初公開」として紹介されていた「燃土燃水献上図」についてお聞きします。この画は私の関係する業界の起源にかかわる画なものですから、非常に興味をもって拝見しました。

解説には、「日本書紀の中にある一節をテーマにしており、石油会社から依頼された画である」、となっていました。日本書紀に書かれているのは「越の国から、燃える水と燃える土が献上された」というほんの一節です。たったこれだけの情報から、どうして、ああいう全体の構図だとか人物表現が出てきたのか。有職故実に、とことんこだわった小堀鞆音の作品だけに、すごく興味があります。

それから、この画は日本石油から依頼されたわけですが、当時、歴史画と言うものは、依頼されて画いたものなのでしょうかそれとも、自発的に画いたものなのでしょうか。依頼される場合、テーマだけなのでしょうか、それとも具体的にイメージを、たとえば「こういう事をこんなふうに画いてくれ」と言われて、画かれたことが多かったのかどうか。
それから、初めての(展示となる)画ですから、この画から、どういうことが読み取れるのかなあと。「小堀鞆音が画いたのは時代の精神である」という、先生(小堀桂一郎氏)の今のお話を聞きまして、この画から何が読み取れるか、お尋ねしたいと思いました。

回答:小堀桂一郎氏

あの絵が成立しました、切っ掛けについては私も存知ません。つまり、全くの注文の絵であるのか、それとも、石油会社の方が、こういう題材の絵を探しているという事を聞きつけて、鞆音が「それなら、俺に描けるよ」と、言ったのかどうか、一切、判らない絵です。ただ、先ほども国学の学びのことについてお話しましたけれど、確かに鞆音は歴史書は、実によく揃えて持っています。古事記、日本書紀を始めとしてですね。これは、国学院大学で「小堀鞆音文庫」になっております。鞆音の資料集ですね、今、マイクロフィルムになっています。それを見ましても、本当に歴史をよく勉強した人だなという事がわかります。だから、先に注文があったかどうかは分かりませんけれども、もし、注文があったとしたら、「ああ、それならば、あの題材を使えば良いのだ」という事は、すぐ、ぴんときたのじゃないかと思います。

かつ、端的に面白い図柄でございますね。あの、アスファルトが発見され、燃える水という石油が発見されて、そして、それが献上になる。それを、村の爺さんと子供が見送っていると。いかにも、庶民レベルで、これは朝廷に献上する、珍しい「この国の物産」として庶民レベルで話題になったのだという事もそこに暗示している訳ですね。そういう意味で、私は、これも、やはり時代の精神、あるいは、産業精神と言っても良いかも知れませんけれど、そういう物の表現になっていると思います。

展示室入口に飾られた「燃土燃水献上図」

2011/10/14(金) 00:49:01|「日本書紀と瀝青」|

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「BOUSUIデジタルアーカイブ」防水歴史図書館

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我が国の防水の歴史を考察する上でどうしても欠かすことのできない文献が何冊かあります。
防水歴史図書館(BOUSUIデジタルアーカイブ)では、そんな文献を1冊ずつ選び、本が書かれた当時の様子、おもな内容、その本のどこが「すごい」のか、現在生きる人たちにとって、どんな価値があるのか、それぞれの資料を担当するキュレーターが、時には執筆関係者への取材を交えて、分かりやすく解説します。

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